標準株と利用推奨株
NBRPゾウリムシでは24種約1,000株の保存株の中で利用者が特に多い P. caudatum、 P. bursaria、P. tetraurelia の特定の6株を「標準株」として提供し、
それ以外の株でユーザーに利用を推奨して株情報の共有を促進したい株を「利用推奨株」として提供しています(下表参照)。
各株の詳細情報については、株名をクリックして下さい。
なお、この表の全ての株はMTAを受領後1週間程度で発送可能です。
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備考
- この表にない種のSyngenの株については下記にお問い合わせください。
山口大学共同獣医学部NBRPゾウリムシ研究室 nbrpcm( )yamaguchi-u.ac.jp ( )を@と置き換えてください。 - P. tetraureliaの51株 (PA040011A)、P. caudatumのMy43C3d株 (PC121015B)、P. multimicronucleatumのM03c4株 (PM024002A)、P. bursariaのDd1g株 (PB032001A)とKM2g株 (PB031002A)は、大核ゲノムの全塩基配列が解読された株です。Yad1g1N (PB031010B)は、共生クロレラの有無によるトランスクリプトーム解析に使用された株です。
- P. bursariaの株名の最後が1NかNC64Aとなっている株は、本来の共生クロレラを除去した白色株に、クローン化した共生クロレラChlorella variabilisの1N株またはNC64A株を細胞内共生させた株です。したがって、これらの株は、遺伝的に均一なクロレラを共生させています。 1N株について:P. bursariaの野生株OS1g (2002年に茨城県潮来市で三輪五十二研究室(茨城大学)の大盛氏が採集)から中原美保氏(広島大学)が共生クロレラをクローニングして1N株とし、1NをOS1wに再共生させた株をOS1g1N (Kodama et al. Protoplasma, 230, 61-67, 2007)、Yad1wに再共生させた株をYad1g1N (Kodama, Fujishima. Protoplasma, 248, 325-337, 2011)としました。1N株の種名はC. vulgarisとされていましたが、後にC. variabilisに修正されました (Kodama, Fujishima, Protist, 163, 658-670, 2012)。1Nのゲノムは未解読ですが感染過程での宿主のRNAseq解析に使用され (Kodama et al, BMC genomics 2014, 15:183)、Yad1g1N株は細胞内共生の研究に広く利用されています。
- P. bursariaの株名の最後がwとなっている株は、野生株をシクロへキシミド等で処理して共生クロレラを完全に除去した白色株です。(Kodama, Fujishima. Protist 159, 3, 483-494, 2008)
- P. bursariaのsyngenの記載について
2021年6月1日から下記のように表記いたします。P. bursariaのsyngenは、R. Bomford によって6 種の存在が記載されていました (Bomford R. The syngens of Paramecium bursaria. New mating types and intersyngenic mating reactions.J Protozool.13, 497, 1966)。これまでに日本で採集されたsyngenは全てがBomfordによる分類のsyngen 1の4種の接合型 (I〜IV)のどれかです。しかし、2012年にポーランドとロシアの研究グループがsyngenを再整理して5種のsyngenの存在を確認し、それらのsyngen名をR1〜R5にし、Bomfordの6種のsyngen名をB1〜B6にして対応表を公表しました (Greczel-Stachura et al. Protist, 163, 671–685, 2012)。SyngenのR1〜R5のスタンダードはロシアのSt. Petersburg州立大学のバイオリソースセンターで維持されています。Bomford の分類ではsyngen 1であったYad1g株を含む日本産の3株は、Greczel-Stachuraらの論文ではsyngen R3に分類されてしまいました。これによって、どちらの分類法によるsyngen番号かを区別しなければ混乱が生じる事態となりました。NBRPゾウリムシでは、混乱を避けるために、2012年に日本産のsyngen番号1を3に変更しましたが、過去の論文に使用されたsyngenとの混同を避けるために、2021年6月1日からは、かつてのsyngen 1は、syngen B1(またはsyngen R3)と表記することにしました(上記の表参照)。
NC64A株について:米国産のP. bursaria (当時のsyngen 1)の野生株(株名不明)からKarakasian SJ (1963) 氏が共生クロレラをクローン化し、NC64A株と名付けました ( Reisser et al. Symbiosis, 6, 253-270, 1988) 。この株は50年以上も宿主外培養で維持され、主にクロレラウイルスPBCV-1による感染の研究に使用されましたが、2010年に種名はC. variabilisと判定されました(Hoshina et al. Phycological Research, 58, 188-201, 2010)。NC64Aは、2010年に全ゲノムが解読され (Blanc et al. Plant Cell 22, 2943-2955, 2010)、2014年にはPBCV-1による感染過程でのクロレラのRNAseq解析に使われました (Rowe et al. PLoS ONE 9 (3):e90988)。2016年には、P. bursaria のYad1w株への再共生実験によって50年以上もの長期間の宿主外培養を経ても共生能力を維持していることが確認され (Kodama, Fujishima. Biology Open, 5, 1, 55-61, 2016) 、前述の1Nと同様に、真核細胞同士の細胞内共生の研究にも利用が見込まれる株です。
リソース IDの末尾 | 提供条件 |
---|---|
A | 条件なし |
B | 研究成果の公表にあたって寄託者・譲渡者の指定する文献を引用する。 |
C | 研究成果の公表にあたって寄託者・譲渡者に謝辞を表明する。 |
D | 提供を受ける前に事前に寄託者・譲渡者の提供承諾書を得る。 |
P. caudatum, My43C3d (PC121015B)
引用指定論文:McGrath CL, Gout JF, Doak TG, Yanagi A, Lynch M.
Genetics 197(4), 1417-1428, 2014.https://doi.org/10.1534/genetics.114.163287
引用指定論文:Kodama Y, Fujishima M.